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2026年第一話 10年放置された茶畑にあらためて注目する | 茶畑開墾とチャノキ残渣活用の試み

2026年第一話 10年放置された茶畑にあらためて注目する | 茶畑開墾とチャノキ残渣活用の試み

三重県亀山市の山間にあるその畑は、10年間手つかずのまま放置されていた。

最初に現地を訪れた際、目に入ったのは2.5mを超える高さまで伸びきったチャノキの山。

そこに雑草や太い葛(クズ)の蔦(ツタ)が複雑に絡み合い、 畑というよりは、完全に鬱蒼とした藪(ヤブ)のような状態だった。

農業経営基盤強化促進法を通じて、この350㎡の土地を借り受けてから1年半。 他の畑作業に追われているうち、気がつけば6年だった貸借期間は4年強と残り少なくなった。 春の作付けを考えると、もう猶予はない。

借りうけた耕作放棄地の茶畑

だが、この開墾で重機とダンプを入れて一気にチャノキを駆逐して開墾しないことには、明確な意味がある。

金銭コストは大きな問題だが、なによりも「島地(周囲の道路から孤立した農地)」であるこの畑と、周辺の畑へ与える負荷(環境コスト)が大きな問題になるためだ。

この開墾シリーズでは、耕作放棄地という課題に対し、個人のリソースと工夫だけで挑んだ、開墾の具体的なプロセスを記録していく。

1. 植生の把握、チャノキのジャングルへ突入(DAY1〜DAY2)
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開墾の初日は、目の前の生い茂る木々を前に、効率的な作業ルートを考えることから始めた。

チャノキは元々人が植えたものであり、よく見ると規則正しく平行に並んでいる。 外周の一角からのぞきこみ、列の方向(走向)を確認してみると、株間はおおむね1.5mだった。 この列と列の隙間に沿って切り進めば、効率よく作業を進められるはずだ。

【DAY1】手作業での通路確保
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初日はあえて草刈機を使わなかった。 高さ2.5mを超えるチャノキの密集地では、安全に草刈機を振り回すスペースがないためだ。

剪定ハサミと手引きノコギリを使い、まずは絡みつく葛のつるを1本ずつ切り落とし、 人ひとりが奥へ進むための動線を確保することに集中した。

伸びきったチャノキと覆いつくす葛(クズ)

なお、外周のチャノキは切らずに残してある。 これは野生動物の侵入や強い風を和らげる「自然のフェンス」として機能させるための対策だ。

【動画】2.5mの壁に手作業で挑む「ジャングル」の記録

10年放置された茶畑を畑に変える(2026 ; DAY1)

  • YouTube @vegegardenclubより

【DAY2】ハイパワー草刈機による空間創出
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動線ができた2日目からは、30ccのハイパワーエンジン刈払機(マキタ・MEM302)を投入した。 木質化して硬くなったチャノキの枝に対抗するため、 一般的な軽量機ではなく、255mmの大型チップソーを回せる高出力な機種が必要だった。

太い枝に勢いよく刃を当てないように気を付ける。 激しい跳ね返り(キックバック)が起きたり危険がないよう、 小刻みに左右へ振りながら、上から数回に分けて少しずつ切り下げる技法を徹底した。 作業を進めるにつれ、徐々に畑らしい輪郭が見え始めてくる。

【動画】30ccハイパワー草刈機による伐採の威力

10年放置された茶畑を畑に変える(2026 ; DAY2)

  • YouTube @vegegardenclubより

【動画】食い込みを避け、段階的に刈り倒す技法の詳細

伸びきったチャノキの刈込の実務・タイムラプス編(2026)

  • YouTube @vegegardenclubより

2. 境界の確定と「開墾の代償」(DAY3〜DAY4)
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【DAY3】公図と現地を照らし合わせる測量業務
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3日目は、作業を一時中断して管理責任の範囲をはっきりさせるための測量を行った。 事前に「eMAFF農地ナビ」で周辺の位置関係を確認し、登記情報の面積を基に巻尺を使って検測する。

隣接地との境界杭が見当たらない場所もあったが、規則正しく並ぶチャノキの株の走向から元の境界線を推定。 民法上の「事務管理」の視点も踏まえ、付近の刈込を行い、 一定間隔でダンポールを打ち込んで自分の管理区域を確定させた。

【動画】測量と境界確定、管理業務の視点

10年放置された茶畑を畑に変える(2026 ; DAY3)

  • YouTube @vegegardenclubより

【DAY4】全貌の露呈と、刈払機の焼き付きの代償
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最終日は、残った木株を地表面スレスレまで切り下げる作業を進めた。 これにより、ようやく350㎡の土地の全貌がクリアになった。

しかし、ここでトラブルが発生する。 連日の硬い木を切ることにより刈払機への負荷が蓄積し、 長年愛用していた刈払機MEM302がエンジン焼き付きを起こして完全に壊れてしまったのだ。

代替機のエンジン刈払機BC264STDを購入し、作業を継続。 手痛い機材ロスだが、これも現実として受け止めるしかない。

ここで、この4日間に投下したリソースを「初期投資(損益分岐点:BEP)」として算出してみた。 自分の動力を一人日20,000円として計算に入れている。

経費項目 内訳・内容 金額(税込)
固定費 草刈機買い替え(焼き付きによる)・予備草刈刃 38,858円
変動費 混合燃料代・現場への交通費(4日分) 3,760円
労務費 自身の労働力を一人日20,000円として換算(4日) 80,000円
合計 茶畑開墾にかかった総初期投資 122,618円

スタート時点で約12万2千円の初期コストが発生したことになる。 この数字を念頭に、ここからどうやって投資利益率(ROI)を回収していくかが、今後の課題となる。


3. 開墾の出口戦略:「負債」を「天然の資産」に変える逆転の発想
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12万円を超える初期費用がかかった以上、これ以上の資材調達によるコストの積み増しは避けたい。

通常であれば、切り倒した大量のチャノキの枝の「処分」にさらなる費用や時間(=負の投資)、 そして周囲の農地への環境負荷がかかることがネックになる。

刈り倒したチャノキの枝木が覆いつくす様子

そこで、今回はこの残渣を処分せず、そのまま活用する方針を立てた。

「横倒しにしたチャノキを、つる性野菜の空中栽培を支える天然の棚(インフラ)としてそのまま利用する」 「チャノキの伐採枝をヒューゲルカルチャーの材料に利用し、レイズドベッドで畑を作る」

こうして廃棄コストをゼロにするとともに、資材費の徹底的な節約を試みる。

また、長年放置されていた開墾初年度の土壌は、いきなり食用野菜を育てるには品質や衛生管理の面でリスクがある。 そこでタフな農作物で、栽培管理が低減でき、初期リスクの低い、非食用農産物の「千成(せんなり)ひょうたん」からスタートすることを選択した。

4. 10年の沈黙が育んだ、茶畑の土のポテンシャル
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ひょうたんの苗作りと並行して、現地の土壌を観察してみると、予想外のメリットに気づかされた。

10年間未整備だったということは、見方を変えれば、

「余計な肥料や農薬が一切入っておらず、チャノキの葉だけが長年ひたすら降り積もり続けた」

ということでもある。 少し土を掘ってみると、歳月を経て見事な「腐葉土層」に変化したフカフカの黒い土が広がっていた。

茶畑跡地の腐食土層を掘り返してみた様子

うっすらと白く、良質な菌糸(糸状菌)も育っている。これは開墾によって得られた大きなアドバンテージだ。

チャノキの跡地であるため、その下層にある赤黄土は強い酸性に傾いているはずだが、 この天然の腐葉土層があれば十分にカバーできよう。

全面を耕起するのではなく、苗を植えるポイント(植え穴)だけを狙って、くん炭や苦土石灰をピンポイントで投入して酸性を中和してやれば、初回の作付けは最小限の労力で根を張らせることができると考えた。

そういう意味では、大型重機を入れ、大量の肥料を投入して多収益を狙う近代農業のスタイルは、この場所には向かないだろう。 コストを抑え、10年という時間を味方につけるやり方。自然がくれた腐葉土とチャノキの棚をフルに活かした、独自の低コスト栽培を試みていく。

【動画】全貌が露わになった瞬間の達成感

10年放置された茶畑を畑に変える(2026 ; DAY4)

  • YouTube @vegegardenclubより

準備は整った。 次回、この茶畑に、手元で大切に育てた40株の千成ひょうたんを、定植することにする。